みこもかる通信~web版~第9回       油漏れ!?それとも。。。

第9回 油漏れ!?それとも。。。

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 田んぼの取水口、水たまり、澱んだ用水路のお水、、、その表面に浮いているキラキラとした膜を見てもしかして油漏れ!?と焦ったことはありませんか?
 そのキラキラの膜は「鉄バクテリア」の仕業かもしれません。

表面に浮かぶ膜
角度によって色が変わります

鉄バクテリアとは、名前の通り水中の鉄分を栄養分にして自然界に生育している細菌の総称です。この鉄バクテリアは水中の鉄分の形を変える過程でエネルギーを獲得し、その結果「水酸化第二鉄」という鉄化合物が生成されます。

               鉄バクテリアの顕微鏡写真

 この写真は、鉄バクテリアを生物顕微鏡で観察した写真です。細長い菌体が縦に連なって糸の様な構造を作っている様子がわかると思います。写真内の茶色いモヤモヤが、鉄バクテリアが生成した水酸化第二鉄です。水酸化第二鉄は水に溶けにくいため、水面に浮くとキラキラの膜に、水底に沈むと茶色い塊になります。

 鉄バクテリアは鉄分が多い環境だと張り切って水酸化第二鉄の膜を作るので、キラキラの膜ができるのは自然界でよくある現象です。しかし、油膜と水酸化第二鉄の膜はどう判別すれば良いのでしょうか?見分け方がありますのでご紹介いたします。

 まず、水酸化第二鉄の膜は無臭ですので油臭がしないかが一つの判断材料です。次に、細い棒等で表面を触ってみてください。水酸化第二鉄の膜の場合、下の写真の様に表面を触るとパキパキと割れて膜に穴が開いたり亀裂が入ります。油膜の場合は、液体なので表面を触っても割れず、境界も滑らかなままです。
(これはあくまでも簡易的な判別方法ですので、全ての状況に当てはまるとは限りません。)

                膜が割れている様子

 鉄バクテリアも水酸化第二鉄も無害ですので、この膜を見つけても焦る必要はありません。油膜の可能性が高い場合はあまりよろしくない状況ですので、消防局等に相談することをお勧めします。検査センターでも鉄バクテリアの同定試験や油分の分析(TPH)を承っていますので、心当たりがある方はご相談ください^^

 そもそも油膜や水酸化第二鉄の膜がキラキラに見えるのは何故?実はシャボン玉も同じ現象が起きています!
  油膜や水酸化第二鉄の膜がキラキラに見える訳は、「薄膜干渉」によるものです。薄膜干渉は、非常に薄くて透明な膜(厚数マイクロメートル)に光が反射すると起きる物理現象です。

ここから先、少し詳しく説明します。


 油膜や水酸化第二鉄、シャボン玉がキラキラと様々な色に見えるのは、同じ現象によるものです。上記の通り、この現象を「薄膜干渉」と呼びます。
 薄膜に様々な波長から構成される光が当たると、薄膜表面で反射する光と、薄膜内に入ってから反射する光があります。これらの反射光が重なると、ある波長は重なり合って強くなり、ある波長は打ち消し合って弱くなります。その結果として色が場所によって変わって見えます。こういった光の干渉度合は膜の厚みによって変動するので、膜の厚さが場所によって変化するシャボン玉や油膜で薄膜干渉が起きる、という訳です。

薄膜干渉 図説

 温かくなってくると鉄バクテリアも活発になるので、春になってキラキラの膜を見かける機会も増えるかもしれません。もしキラキラの膜を見つけたら、表面を観察してみてはいかがでしょうか?
                                           ねこ好き研究員 ねこ田