みこもかる通信~web版~第12回       PFASについての疑問、お答えします!

第12回 PFASについての疑問、お答えします!

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水道水検査に関わる業界で、「PFAS」が今最もアツい話題となっています。というのも、令和8年4月から水道法水質基準にPFOS及びPFOAが追加されることが決まりました。つまりは、全国の水道水で定期的なPFAS検査が義務付けられることを意味しています。そして、私たち水道水登録検査機関は、PFAS検査の義務化に向けて準備を整えてきました。

ここで、
(1)PFASって何? どうして規制されるの?
(2)そもそも水道法とは!
(3)水道法水質基準に追加されるとどうなるの?
(4)どこの水道も安心なの?
 こんな疑問を抱えている方もいらっしゃると思います。今回は、話題になっているけれど、わからないことが多いPFASについて、ご説明させていただきます。

(1)PFASって何? どうして規制されるの? 
 PFAS(通称ピーファス)とは、炭素とフッ素からなる人工的に作られた「有機フッ素化合物」の総称です。1万以上の種類があるPFASの中で、特にPFOSとPFOAの2種類は様々な用途で使われてきました。

PFOS PFOA
ペンフルオロオクタン酸 通称ピーフォス  ペンフルオロオクタンスルホン酸 通称ピーフォア
推定生産量13670t(1985年~2005年)
・半導体用反射防止剤
・レジスト(電子回路基板を製造する際に表面に塗る薬剤)
・金属メッキ処理剤
・泡消火薬剤
推定生産量3600~5700t(1985年~2005年)
・フッ素ポリマー加工助剤
(他のフッ素化合物を製造する際に添加する薬剤)


①難分解性   環境中で分解されにくい
②生物蓄積性  動植物の中に蓄積される
③慢性毒性   長期間暴露することで人体に悪影響を与える
 この3つが問題となり、POPS条約・化審法で規制の対象となりました。現在の日本では製造も輸入も禁止されています。永久の化学物質と呼ばれるほどの難分解性の物質ですので、まだ環境中には残留しており、地下水からの検出事例が散見されています。具体的な健康への有害影響は現在検証中です。ですが有害性を否定できていない現在、規制が必要だと判断されました。

(2)そもそも水道法とは?
 水道法の目的は、「水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに、水道の基盤を強化することによって、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与する」ことです。ざっくり言うと、安全な水を低価格で豊富に供給するために、水道施設の管理の基盤を強化し、国民の生活をより良くするための法律です。
 水道とは、水を人の飲用に適する水として供給する施設の総称です。(臨時的に作られたものを除きます)そして水道法第4条の規定に基づき、水道水は「水質基準に関する省令」で規定する水質基準に適合していなければなりません。現在51種の物質に水質基準が設定されています。

(3)水道法水質基準に追加されるとどうなるの?
 そして令和8年4月1日から、この51種の物質にPFOS及びPFOAが追加されて52種となることが決まりました。つまり、水道水でPFOS及びPFOAの検査が義務付けられ、基準をクリアした水道水のみが供給される、ということです。
 それではPFOS及びPFOAの基準値はどれくらいなのでしょうか?

50ng/L以下 ng=ナノグラム

 これは、PFOS及びPFOA が水1リットル中に50ng以下であることを確かめなければならない、という事です。1gの1/1,000,000,000が1ngなので、非常に微量であることがわかります(50mプールに1滴落とした程)。逆に言うと、それだけ厳しくしないといけない物質であると言えます。
 そして50ng/Lという濃度は、PFOS及びPFOAの毒性評価から算出されています。現時点では十分に安全と判断できるレベルに設定されていますが、現在も行われている研究や調査結果によってはより厳しくなることや、緩くなる可能性も十分考えられます。今後の動物実験や疫学調査から得られる知見や分析方法、処理方法の進歩によって変わってくるということです。

(4)どこの水道水も安心なの?
 自治体等が運営する水道事業者(上水道事業)は、PFAS汚染の実態が明らかになってからしっかり安全確認を行い、基準を超えた場合には代替水源を充てる等の対策がとられています。令和7年現在、PFASが基準超過した水は一切供給されていません。

 しかし上水道は安全として、簡易水道、専用水道の水はどうなるのでしょうか?
・簡易水道:給水人口が5000人以下の水道
・専用水道:給水人口が100人以上で水道事業者が供給する水以外(地下水等)を利用した水道

 環境省が令和6年9月に調査した時点では、簡易水道の5割、専用水道の8割がまだ調査していない又は未回答、というのが現状です。ですのでこれらの水道も令和8年度からPFOS及びPFOAの検査が義務付けられました。注意が必要なのは、上水道と違った頻度の検査となる場合があることです。簡易水道や専用水道の管理者の方で、PFASについてわからないことがありましたら、ぜひ一度長野県薬剤師会検査センターにご相談ください。
 環境省が作成したPFAS検査についての資料も参考にしていただければと思います。こちら

 ここで重要なのが、個人で所有している井戸水に関しては今のところ検査の義務が無いことです。心配な場合は自主的な検査が必要です。費用等のご相談も受け付けています。

まとめ

 長野県薬剤師会検査センターは、長野県の中で早期からPFAS分析に対応してきました。水道水だけでなく川の水、排水等様々な水でPFAS分析が可能です。また、現在PFAS専用の分析機器を新たに導入し、2台体制で今後のPFAS検査の需要に対応できるようしっかり準備を整えています。

 長野県薬剤師会検査センターは長年中信地域の地下水、水道水を調査分析してきた実績と経験があります。PFASについて少しでも不安に思う事、確かめたいことがありましたらお気軽にお問合せください!

長野県薬剤師会検査センター PFASお問合せ窓口 担当:涌田(わくた)

 📞0263-32-0276

ねこ好き研究員 ねこ田